血液透析はハイスペックな高級車!?
堀川 腎不全で命を落とすはずの人が、生きて日常生活を取り戻せるという意味では、血液透析は素晴らしい医療だと思います。でも、衰弱して耐えがたい痛みで透析を回せなくなった時、どうして何も手立てがないのでしょうか。
森 血液透析は、たとえると、体中を駆け巡るハイスペックな高級車です。体のなかの太い道路(血管)から水分を除去し(除水)、老廃物を抜いてくれますが、細い道路からの除去は得意ではありません。また、食べる量が減る終末期や高齢の患者さんはそんなに抜く必要がないのに、抜きすぎてしまうのです。
かつ、本来、不要な老廃物を抜くのが透析ですが、血液透析はアルブミンやグロブリンといった免疫力を司る大事な物質まで抜いてしまいます。終末期や高齢の患者さんには、その悪影響のほうが強く出てしまう。
それでも尿毒症にするわけにいかないから、どんな状況になっても透析を続けるしかない……。
堀川 「奥さん、大丈夫です、まだ回せます」と何度も医師に言われました。目の前で苦しむ夫は全然、大丈夫じゃない。この時点で患者の心は完全に置き去りでした。血液透析がハイスペックな高級車なら、腹膜透析は何でしょうか?