「子ども向け」だと思っていた

見る前は正直、「どうせ子ども向けでしょ?」くらいに思っていたんですよ。主人公はお約束の「孤児」。両親に置き去りにされたとき、「きっと迎えに来る」という手紙とハートの形のネックレスが残され、そのネックレスを時々見つめては「きっとパパとママが迎えに来る」と前向きに生きるアニー。優しくて正義感もあり、いじめられっ子やいじめられる犬のために闘うファイトもある。「子どもの時に腐るほど見た、色んなアニメの設定とそっくりじゃん??」と、あんまり期待していなかった。

しかし、2014年版はクワベンジャネ・ウォレスという有色人種の女の子が主役アニーを演じる辺りがとても現代的!   映画の主役の子役は決まって「金髪碧眼」だったのはもう昔の話。WASPが支配していたと言われるアメリカで、今でもあるだろう差別や貧しさと闘う有色人種の彼女が孤児という設定は自然だし、やがて出会う彼女の「足長おじさん」こと、ウィル・スタックス(ジェイミー・フォックス)が有色人種なのも、「底辺からのし上がってきた」感が満載で納得。この2人の芝居がとてもいいし、冒頭から音楽使いも素晴らしく、私も主人もいつの間にか前のめりになって画面に食いついていた。

『アニー』がスーパー・ロングランのミュージカルであるのも道理。実は子ども向けなんかでは全然なく、大人が見てニヤニヤしちゃうシーンや台詞がてんこ盛りなのだ。なかでも最高なのがキャメロン・ディアス演じるハニガン。

孤児院を切り盛りして子どもたちの面倒を見てはいるものの、それは生活の為。かつては歌手だったけれども落ちぶれて飲んだくれ、子どもたちには当たり散らしている。男の訪問者がくれば「苗字はハニガン。でもそろそろ変えてもいいと思っているの、意味わかる?」と色目を使う。いわゆるアバズレが孤児の面倒を見ているという設定がもう、サイコー。振り切ったキャメロン・ディアスの芝居もいい。