裏テーマは「お金」

さて、アニーは犬を虐めていた男の子たちを追いかけている時に車に跳ねられそうになるが、それを助けてくれたのが、億万長者のウィル・スタックス。「そんなうまい話あるわけないじゃん!」とツっこみたくなるが、其れを納得させてくれるのがこの男のひねくれキャラっぷり。億万長者で市長に立候補するが、全然人気がないのも道理。お金の次には名誉を手にし、成功することしか頭にない、がりがり亡者なのだから。

要するに『アニー』に出てくる大人たちは、優等生でもいい人でもないのである。そこが子どもには痛快だろうし、大人も素直に感情移入できる。キャラクター造形が何とも魅力的なのだ。ただ、余りにも露骨な「金持ち礼賛」描写が、この映画の評価を「傑作」と「そうでもない」の間で揺れさせているんだと思う。

「結局お金の力でしょう?お金があるから権力に介入してFBIも動かせるし、ヘリコプターで追跡もできるんだし!!」と言いたくなるくらい、有り余るお金を前提にした物語であるのは事実だが、見ていて快感なのは言うまでもない。其れは、「富とは快楽である」ということを、この映画が直視しているからだ。

私達は、「人生で大切なのは愛です。正しく清く貧しく生きることが大切です」と教わる。お金を崇拝することは悪かのように教わる。でも、ないよりはあった方がいいのがお金だ。「貧すれば鈍する」とか「衣食足りて礼節を知る」という言葉にもあるように、お金がなさ過ぎても、人は愛を見失う。清貧が正義だというのは、大抵嘘だと、大人になるにつれ思う。1982年版では懸賞金を目当てに、山のような「偽の両親」が現れるし、この2014年版でもお金欲しさにアニーの偽の両親を演ずる夫婦が登場する。

お金という魔物の前で揺れ動く人間の性を、正直に見つめているからこそ、この映画はすばらしいと私は思った。有り余る富を味わったウィル・スタックスだからこそ、「やはり愛がほしい」と求める姿に、私たちは涙する。

そう、『アニー』の裏テーマは、ずばり「お金」なのである。飾らない人間の本音を描いているから、登場人物の行動や言葉がいちいち心に突き刺さる。

けれど、アニーだけがお金に惑わされずに愛を求めている。特に何か才能があるとかではないのに運や出会いを掴むのは、彼女の無垢な魂が人を感動させるからだろう。真心こそがやはり、幸せになるために必要なことだと、庶民である私たちが前向きに生きるためのメッセージをこの作品は与えてくれる。