豪と蘭子の最後の夜は…
召集令状が届き、豪は日中戦争に従軍することに。
「ドラマの中でもこの時代だったら日本ではこういうことが起きているということを年表にしています。豪くらいの世代だったらそろそろ出征するよねということで、豪が戦争に行くというストーリーになりました」
豪と蘭子が恋に落ちる展開は、中園さんのアイデアだった。
「蘭子は朝田三姉妹のなかでも、一歩引いていて自分よりも人の幸せを願うタイプ。そんな蘭子だからこそ、豪にひかれるんじゃないかということはチームでも議論していました」
蘭子は豪への思いが告げられないまま、壮行会が開かれる。盛り上がる宴のさなか、そっと家を出た豪を蘭子が追いかけ、気持ちを伝えあうシーンは、河合と細田さんの名演もあって、作中屈指の名シーンとなり、視聴者の反響も大きかった。
「あんぱんのテーマの一つに大きく関わっているシーンです。試写段階で涙してしまいましたが、あんぱんで描きたいテーマの一つが戦争です。もう2度と戻ってこない“今”という時間をどう生きるのかは現代に通じるテーマ。豪は出征するけれど帰ってくるかどうかはわからないから、2人にとってはいったん最後の時間となるからです」
大事なシーンとして臨んだ撮影だが、
「河合さんと細田さんの佇まいや表情、仕草のひとつひとつがその瞬間しかない時間を、役を通して生きていると伝わってきました。もう全国民に見ていただきたいし、非常に手ごたえを感じました」と振り返る。