(『あんぱん』/(c)NHK)
俳優の今田美桜さんがヒロインを務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)。子どもたちの人気者<アンパンマン>を生み出したやなせたかしと、妻・暢の夫婦をモデルとした物語だ。昭和初頭から始まったドラマには、戦争が暗い影を落とす。朝田家の石工、原豪(細田佳央太)が出征。蘭子(河合優実)との切ない恋物語が視聴者の心を大きく揺さぶった。豪が生還したら結婚する約束をした2人だが、第37回では豪の戦死が伝えられた。いよいよ戦争編が本格化するなか、蘭子と豪のエピソードの舞台裏を、制作統括の倉崎憲さんに聞いた。

河合優実は「ずっと見ていたい人」

蘭子は、ヒロイン・のぶの妹で、朝田三姉妹の次女だ。真面目で勉強もできるが、家族思いで郵便局に勤めながら家を支えていた。演じる河合さんは、ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK)『不適切にもほどがある!』(TBS)で注目され、多くの映画やドラマに出演中。主演から助演までこなすが、その佇まいと独特の存在感は唯一無二だ。河合さんは今作ではもともとヒロインオーディションを受けていた。

「グループオーディションで初めて河合さんにお会いした時に、ひきつけられました。芝居に限らず彼女の自己紹介やほかの人の演技を見ているときの佇まいを含めて、『ずっと見ていたい人』でした」と明かす。  

印象に残っているのが、最終候補者が集まったカメラテストだという。

「1人ずつ芝居をしてもらったのですが、河合さんはスタジオ内の環境を人知れず確認していました。たとえば『あそこに時計がある』とか一瞬で空間を把握して自分のものにしているのを見たときにすごいなと感じました。すべてをお芝居に反映させているわけではないと思うのですがその嗅覚がすごかった」

ヒロインが今田さんに決まった後に、次女役と三女役について検討した。

「蘭子は冷静で俯瞰で家族全体のことを見ている。自分より家族の幸せを願っていることも含めて、河合さんに演じていただいたら、すごくはまるんじゃないかなと考えました。姿勢も良くて所作も美しいし、昭和の着物も似合うのではないかとも思いました」