柚香光さん
「宝塚で男役のお芝居をしてきた私にとって、女性を演じることはもちろん、妻であり母であるという役どころも初挑戦」

今回、私が主演させていただくのは、《いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective》と銘打った、新感線流のお伽噺です。演じるのは、娘とともに鬼にさらわれたとみられる女性・紅子(べにこ)。鈴木拡樹さん演じる夫が、10年前に消えた妻子の行方を追うところから物語は展開していきます。

宝塚で男役のお芝居をしてきた私にとって、女性を演じることはもちろん、妻であり母であるという役どころも初挑戦。発声だけでなく、身体の使い方も表現する感情もまったく違うので、準備を重ね、気合いに満ち満ちて稽古に臨んでいます。

稽古初日の本読みで初めて男性の役者さんとセリフを交わしたときは、やはり新鮮で刺激的でした。それと実は、殺陣や振付以外は鏡を使わずに稽古するということも初めてで。

宝塚では常に鏡がある稽古場で稽古をしていましたので、違いを面白く感じたりもしました。そんな小さな発見の毎日で、ワクワクドキドキしながら日々を過ごしています。

稽古場は活気があって笑いが絶えません。たとえば、誰かがセリフを情感たっぷりに面白く話すと、周りの方々も役としてツッコミを入れたり、お芝居でそれに返したりして楽しい掛け合いになる。

そういう劇団員の方々ならではのやりとりや、生まれてくる空気感がとても素敵で、私もつい笑ってしまうんです。ただ、紅子は笑い担当ではないので(笑)、お芝居の中では、紅子としてどんな時も存在していたいと思っています。