女性の動きを芯から丁寧に作る
紅子は優しく繊細で、愛情深くかわいらしい女性です。そんな人が、実は鬼としての葛藤を抱えながら生きている。どれほどつらく苦しいだろう、と胸が締めつけられます。いのうえさんの演出に、紅子の気持ちを教えられることも多いです。
たとえば「このセリフはこういう声色で、こういうトーンで。懇願するように言ってみて」というオーダーを受けて言ってみると、そこに彼女が歩んできた時間や切実な願いがわっと立ち現れてくるんです。
紅子をいかに説得力を持って演じられるか。紅子としか見えない存在になれるか。私にとっては、女性としてお芝居するということも課題ですが、それを外見だけではなく中身から作っていきたい。芯から丁寧に役を作ることで、自然に女性の動きになればと思っています。
とはいえ、紅子は平安時代の貴族の奥方なので、私は着物姿の美しい所作をどんどん学んでいかなければなりません。自分では最大限女性らしい仕草をしているつもりでも、たおやかさが足りなかったり、気をつけていても不意に男役のクセが出たりして。
か弱く逃げなければいけないところで、凜々しく立ってしまっていたりするのです(笑)。振り返る、指をさす、首を傾げる、駆け寄るといった動きのすべてに、これからもっと彼女の呼吸を浸透させていきたいと思っています。
それから、楽しみにしているのは、立ち回りやダンスのシーン。アキレス腱を伸ばしながら、エンジンをブインブインふかしています。(笑)