『わが家は楽し』で脚本を書いた映画監督の山田洋次さん(右)と

決定稿をいただいたら、いよいよキャスティングです。今回は、今までよく出てくださっていた役者さん以外でやってみようと思い、交渉を始めました。「また、いつものファミリーね」と言われるのはイヤだし、新鮮な気持ちで作りたい。観る方にも新鮮に感じていただきたかったからです。主演の戸田恵子さんも小日向文世さんも、初めてご一緒しました。

撮影中、家を出るのは朝5時か6時頃。みなさんより早くスタジオに到着して、「おはようございます。今日もよろしくお願いします」と言わないと、失礼ですから。撮影が一通り終了すると編集作業に入りますが、もちろんそれも立ち会いました。

ドラマができあがってオンエアされたら、びっくりするくらい、いろいろな方からお電話をいただいたのです。放送日の夜中の1時くらいまで、次々と「観たわよ。よかったわね」。そう言っていただき、ほっとしました。やはりオンエア当日は、すごく緊張していましたので。

今まで2020本を超えるドラマを作ってきましたが、いまだに毎回、緊張しますよ。どのくらいの人に観ていただけるのかも気になりますし、無駄なものは作りたくないんです。おかげさまで翌日からも何本も「観ました」という連絡をいただき、「あぁ、よかった」と、ようやく胸を撫でおろしました。

そしていまだに、毎回「これでいいんだろうか」と自問自答しながら取り組んでいます。どれだけ経験を積もうと、最初から「これでいい」と思ってはいけないと肝に銘じているんです。