これまで2020本以上のドラマを作ってきたという、日本を代表するテレビプロデューサー・石井ふく子さん。98歳の今も、プロデュースする作品の現場に立ち会うそう。ドラマ作りへの思いと、健康管理について聞きました(構成:篠藤ゆり)
今でもオンエア当日は緊張してしまう
2025年3月、私がプロデュースしたドラマ『わが家は楽し』が放送されました。脚本を書いてくださったのは、映画監督の山田洋次さんです。
初めて山田さんに脚本を書いていただいたのは、『東芝日曜劇場 片想い~姉妹の恋より~』(1966年)なので、もう60年近く前になります。山田監督の代表作でもある「寅さん」のシリーズが、まだ始まっていない頃でした。以来、20本以上ドラマでご一緒しましたが、今や映画界の巨匠中の巨匠です。
今回、「当たって砕けろ」と思ってご連絡したところ、「いいよ」と言っていただいたのでびっくり。私が「家族の話をやりたい」とお話ししたら、山田さんも「それは賛成だ」とおっしゃいました。
ドラマの構想を練り始めたのは、放送から1年以上前です。テーマは今まで同様《家族》にしたいと思ったのですが、ではどんな家族を描くのか。じっくり考えた末、定年退職後の夫と妻の心のすれ違いを取り上げようと決めました。
山田さんにお会いしてそのことをお伝えし、いろいろ話し合い、第1稿があがってきたのは2ヵ月後。それを読んで、「失礼ですが、ここをもう少しふくらませてください」とお願いすると、「いいよ」。山田さんにそんなこと言う方、少ないんですって(笑)。「ま、石井さんだからしょうがないよ」と、書き直してくださいました。