「自由であるべきは心のみにあらず」
林 今回の劇場版アニメは、大ヒットだそうですね。
池田 準備期間を含め、9年かけて作ってくださった。今回私がいちばん嬉しかったのは、オスカルがバスティーユ監獄を襲撃する時に発した、「自由であるべきは心のみにあらず。人間はその指一本、髪の毛一本にいたるまで、すべて神の下に平等であり自由であるべきなのだ」というセリフが初めて映像作品で入ったこと。そうそうこれを私は言いたかったの、と試写で観て泣きました。
林 『ベルばら』は、フランス革命にまつわる膨大な歴史を誰にもわかるようにかみ砕いた作品になっているのが、本当にすごい。当時、少女向けの読み物であれほどクオリティの高い作品はほかになかったと思います。
池田 女の子たちは、ドレスの華やかさにまず憧れて。
林 それが中学高校で歴史を勉強し始めると、「あれは本当のことだったんだ」と驚くわけです。ベルサイユの建築から兵隊の制服まで、ものすごくこだわって描いたわけでしょう。
池田 連載当時、海外旅行は高嶺の花だったし、ネットもない。資料を買い込むと大赤字でした。
林 でもオスカルの着る近衛兵の制服は、史実ではなくヴィジュアルで選んだそうですね。
池田 本当はもう少し時代の下ったナポレオン時代の制服なんです。その頃の軍服は史上最高といわれるほどかっこいい。なぜかというと、女の人に「わあ素敵」と言ってもらえるようじゃないと、民間から兵隊を集められなかったから。(笑)