そうした華やかな側面ばかりでなく、『ベルばら』は革命に至るまでの民衆の苦しみや窮状もリアルに描いている。そんな本格的な歴史漫画が多くの読者に支持されたというのは、当時の日本の女の子の知性の高さを示していると思います。

池田 「母から借りて」「おばあちゃんに勧められて」と、三代にわたって読んでくださる方が多いのも嬉しいですね。

林 いまや『ベルばら』は、海外にもファンが広がって。

池田 もう何十年も前になりますが、初めてフランスを訪れた時にバスツアーのガイドさんが「日本の若い女性がベルサイユを舞台に物語を描きました」と案内していました。数年前に旅した際には、フランス人のガイドさんが「ここがアンドレの亡くなった場所です」と。(笑)

 その後、池田さんは、ベルサイユ宮殿でドレスを着て舞踏会に出たこともありましたよね。

池田 景気がいい頃は、海外の企画で招待されたりしましたね。そういえば去年のパリオリンピックで、コンコルド広場がスケートボードやブレイキンの会場になったでしょう。その時、どの放送局も「ここはルイ16世やマリー・アントワネットが処刑された場所です」と言及しなかったのを、疑問に感じたの。

 開会式が大雨だったのは、フランス革命の死者たちの祟りだったのかもしれない。

<後編につづく>

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