なにゆえこうも違うのかの…

自らの境遇を憂い、庭を前にため息をつく佐野政言の元へやってきたその父・政豊。

政豊は、政言が呼び止めるのも聞かず、錆びた刀を手に足袋のままふらりと庭に降りていきます。

次の瞬間、花を咲かせない桜を前に、「咲~け~、咲~け~」と声をあげながら刀を振り回し始めた政豊。

すっかり耄碌したその姿を見つめる政言は

「なにゆえ…なにゆえこうも違うのかの…」

と呟くと、大粒の涙を流します。