北村匠海のあたたかさ

<嵩は幼いころからのぶを思ってきたが、戦争中2人はすれ違いを重ね、のぶは次郎と結婚してしまった。のぶと嵩の関係性が変化するきっかけとなったのが戦後、次郎を失ったのぶと弟・千尋を戦争で亡くした嵩が焼野原で2人が再会するシーンだ>

嵩とは、戦争が終わった後、4年ぶりに焼野原で再会しました。大好きだった子どもたちを傷つけてしまい、のぶがどん底に落ちていた時です。のぶは責任感が強いので「自分は生きていていいのだろうか」と思いつめていました。だからこそ、嵩の「死んでいい命なんてひとつもない」という言葉がぐっと響いたんです。嵩はのぶの恩人という感覚でした。

(『あんぱん』/(c)NHK) 

撮影では、北村さんが「戦争に行って達観した嵩でいたい」とおっしゃっていたのを覚えています。のぶはこれまでは「たっすいがはいかん(弱々しいのはだめ)」と嵩を勇気づけてきましたが、この時は、嵩に引っ張りあげてもらった。嵩とのぶは、お互いがお互いを引っ張り上げるような関係だと思っています。

北村さんご自身のあたたかさにもすごく救われました。いつも本当に寄り添ってくれる人です。2人のシーンで、「ここをどうしようか」と話すことはありませんが、いつも静かに見守ってくれるところは嵩と似ています。

共演回数も多いですが、一緒にお芝居をさせていただくと、キャッチの能力がすごい方だと感じました。『あんぱん』では、毎日一緒に撮影させていただいたことで信頼関係もできているかなと思います。