「のぶらしさ」を思い出させてくれた次郎
昨年9月に高知でクランクインして、これまで撮影を重ねてきました。これほど役と一緒に悩んだり、涙したりする経験はありません。役としての感情なのか自分なのかわからないぐらい、のぶとして生きてきているんだという感覚になりました。自分の財産ですし、こんな経験はもう二度とできないと思っています。
<物語の前半では戦争に向かう社会の空気が丁寧に描かれた。のぶは女子師範学校で愛国教育を受け、家族同然だった石工の豪の戦死もあり、「愛国の鑑」と呼ばれるように。朝ドラヒロインが軍国少女となる異例の展開を見せた>
のぶは、教師として「愛国の鑑であるべき」とは思っていたけれど、婚約者の豪ちゃんを戦争で失った蘭子との関係にも悩んでいました。葛藤を家族にも言えずに1人で抱えていた時に出会ったのが次郎さんです。のぶの葛藤ごと優しく包み込んでくれて、弱い部分を認めてくれたからこそ、「この人に委ねてみたい」と次郎さんとの結婚を決めたと思いました。

でも、次郎さんは戦後すぐに病気で亡くなってしまいます。次郎さん役の中島歩さんとの撮影は1週間くらいですが、次郎さんとの結婚生活でのぶは愛情をたくさん受け取りました。だからこそ、次郎さんが亡くなった後に、次郎さんが撮影してくれた写真を現像するシーンはつらかったです。受けてきた愛情を思い出して苦しくなりましたし、忘れられないシーンになりました。
「自分の目で見極め 自分の足で立ち 全力で走れ 絶望に追いつかれない速さで」という次郎さんが残してくれたメッセージはのぶにとって大事な言葉です。のぶは、幼い頃から走るのが大好きだったので、「のぶらしさ」を思い出させてくれました。これから嵩とのぶ2人で歩んでいくなかでも大事な言葉になるんじゃないかと感じています。