母、スキンケアの基本を説く

大きく状況が変わったのは、息子が高校生になり急激にニキビができはじめたころ。はじめは何をやっても次から次へと吹き出物が現れ、本人もややパニックになっていました。

たぶん、いままでろくにスキンケアもせず、顔を洗うのも適当でもなんとかなってきたのが、自分はなにも変わっていないつもりなのに体が変化したのだから当然です。いわゆる思春期ニキビはみんな通る道。親もああだこうだと調べものをしたり助言したり。でも高校生の男子なんてお年頃だから、母親の言うことはそんなに真面目に聞いてくれません。

『父と息子のスキンケア』(著:高殿円/早川書房)

だけどな、息子よ。母はニキビとはもう半世紀近くつきあっとるんよ。この道の猛者なんだよ。言うことを聞け。

と怒鳴りたくなるのをぐっとこらえ、息子にスキンケアの大事さをこんこんと説くこと約1年。

洗顔は、髪の毛の生え際まで丁寧にやること。

ニキビは皮脂汚れが毛穴をつまらせることによって起こるので、とにかく洗顔が大事なこと。

皮脂汚れを放っておくとにおうこと。

そして洗顔をしたらすぐに保湿をしないと、結局皮膚からの脂分が毛穴を埋めてしまい、またニキビが繰り返しできる要因になること。

女子ならばもう卵かけご飯のように簡単に摂取できてしまうスキンケアの基本ですが、まあおそらくうちの相方(パートナー)は知りません。知らなくてもなんとなく生きてこられたからでしょう。やつの高校生のころのことは知らないし。本人もよく覚えてないらしい。