永さんとの共通点は「放送作家」「コラムニスト」、そしてラジオが大好き…ということで、話も弾んだそう(『婦人公論』2003年9月22日号より)

NHKの朝ドラ『あんぱん』、今週は「見上げてごらん夜の星を」と題され、主人公の北村匠海演じる柳井嵩が、いせたくや(大森元貴)に頼まれてミュージカルの舞台美術に挑戦するさまが描かれた。そこで登場する、個性強めの演出家・「えいちゃん」六原永輔(藤堂日向)は、作詞家であり、放送作家として昭和のテレビ界に大きな影響を与えた永六輔さんがモデルと思われる。SNSでも「特徴をよくとらえている」「口調が懐かしい」と話題に。このミュージカルのテーマソング「見上げてごらん夜の星を」が坂本九さんの歌で大ヒットし、現在も歌い継がれている。永六輔さんとはどのような人だったのか。親交のあった山田美保子さんの寄稿を再配信します。

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放送作家・コラムニストとして、数多くの著名人にインタビューし、コメンテーターとして活躍している山田美保子さん。さまざまな出会いや、出会った人のアドバイスを通じて、今の自分があるという山田さんが、自分が楽になるコミュニケーション術を紹介する連載。第4回は、「永六輔さんのこと」です

恐れ多くて気安く話しかけられなかった

TBS954キャスタードライバー時代、お目にかかった有名人の中でも誰もが認める「神様」のような存在だったのが永六輔さんです。

放送作家としては「テレビの神様」、作詞家として「歌謡界の神様」でもある永さん。坂本九さんの『上を向いて歩こう』は有名ですが、意外にも、水原弘さんの『黒い花びら』も永さんの詞。さらには『黄昏のビギン』や『夢であいましょう』のように多くの歌手の皆さんに歌い継がれる曲もあり、中村八大さんとのコンビによる大ヒットの数々は日本の歌謡史に残る名曲ばかりです。

その背中はあまりにも大きく、存在自体が恐れ多すぎて、こちらとしては、気安く話しかけるようなことができなかったのですが、「放送作家」で「コラムニスト」、そしてラジオが大好き…という私に、《共通点》を見出してくださったのは永さんのほうでした。永さんはTBSラジオで複数の冠番組をもっておられて、私は主にキャスタードライバーを卒業してから、永さんの番組に出演させていただく、とても有難い機会が何度かありました。

『婦人公論』の連載、糸井重里さんがホストの鼎談「井戸端会議」誌面。テーマが「ラジオへの誘い」ということで、永さん山田さんがホストに(2003年9月22日号)

お考えや信念の多くは《記録》として著書や音源に残っているのですが、永さんがお亡くなりになってから、手に取ったり、目にしたりすることが叶わなくなったのが、永さんからの直筆のハガキやお便りです。

あれだけ、お忙しくされていたうえに、永さんは文筆業でもありました。誰かへのハガキや手紙よりも、書かなければならない原稿がたくさんおありだったことでしょう。にもかかわらず、永さんは信じられないほど《筆まめ》だったのです。