今あたしが必死で考えているのは、いかにしてブラをせずに外に行くかだ。あたしの生活で、外とは、四種類しかない。

散歩。買い物。東京。ズンバ。

散歩は夜中だ。ブラはいらない。だれもいない。裸で歩いたって大丈夫だ。

昼間は、とてもじゃないが、クレイマーを連れ出せない。歩ける気温になるまで待つと真夜中になる。近所の川べりを歩き、クレイマーは水に入り、あたしもばしゃばしゃ。懐中電灯で川面を照らすと魚がおびただしく跳ねる。川の中でコイが動く。毎晩同じところに同じコイ。毎晩犬用ジャーキーを投げてやる。そのうち懐いて寄ってくると思うけど、すでに懐いてて、毎晩そこにいるのかもしれない。野良猫を馴らしているのと、あまり変わらない。とてもかわいい。

次にズンバ。これは問題外。最初からブラを装着して濡れそぼっている。

そして東京。ほぼ月いちで上京する。そのたびに人に会う。地下鉄に乗る。仕事着としてつねに同じ黒シャツを着ているから(ねこちゃんに「オバQ」と言われたやつ)その下に黒いタンクトップを着るだけだ。

ブラじまいを決意したのが二〇一九年、早稲田で教えていたときだった。その後、前あきブラ、高齢女用ゆるゆるブラ、若い子用の腹巻きみたいなブラと試行錯誤した結果、ユニクロの、ヒートテックじゃない、ふつうのタンクトップに落ちついた。新品の方が、ぴたっとして、乳房が目立たない。それで何十枚も持っている。