「自分は帰ってきて申し訳ない」

やなせ先生は、長い間、戦争の話はしませんでした。大勢の戦死した人がいるのに、自分だけが生き残ったことが申し訳なくて、戦争に行ったことを話せなかったのです。

(『あんぱん』/(c)NHK)

千尋さん1人を亡くしたことだけではなくて、戦地へ行って戦死して戻れないすべての人のことが頭にあった。世の中がどんどん平和になり、戦争の爪痕がなくなっていくうちに、そうすると今度はやなせ先生自身がその過去のつらい体験を思い出したくなくなったそうです。

でも、先生が90歳近くになった時に、「戦地へ行って体験した人もみんな減ってきた」と言っていました。自分は直接戦闘を経験しなかったけれど、それでも戦争のことはやっぱり話しておくべきだと思うから話すと言って『ぼくは戦争は大きらい』という本にまとめました。

 やなせ先生が一番言っていたことは、「一度戦地を体験したら2度とも戦争なんかしたくなくなる。それほど戦争は絶対やっちゃいけない」です。そういう強い思いが最後までありました。