主題歌は朝ドラの顔
これまで主題歌なしの回を作ったのは2回。主題歌は朝ドラの顔であり、窓口だから必要。普通ならドラマの内容が長くても、カットして主題歌を入れます。でも、それよりも内容の方を入れたほうがいいということで、嵩と清の再会シーンと、のぶが「何者にもなれんかった」という回では主題歌をかけませんでした。
この2回は『あんぱん』というドラマの核。番組の顔である主題歌タイトルと内容のどっちを取るかと言ったら、内容を取る。内容が単に「長いから」では主題歌は削りません。
最終週の編集が一段落した時、自宅でののぶと嵩の会話が終わり、場面が変わって桜の下で2人が歩き出す、というポイントから、4分ある『賜物』のフルバージョンを試しにかけてみました。すると、尺がちょうど合い、しかも、ほとんど台詞や芝居を音楽が邪魔する事もなく、むしろ補完してあまりあるくらいの感じになっていました。
これぞ、何かからの「賜物」だと思いました。編集マンと私は、即座に「これで、いこう!」となりました。その後、少しのタイミングや曲調の微修正はしていますが、基本的には、最初に編集で合わせたままの形になっています。
<ラストシーンは、並木道を手をつないで歩いていくのぶと嵩の後ろ姿で終わった。2人の頭上には、青空が広がり、雲の形はよく見るとアンパンマンになっていた―>
ラストシーンでは、開かれたイメージと閉じたイメージの共存を意識しました。ラストの青空に浮かぶアンパンマンの形をした雲、あれは、オープニングのタイトル映像とあえて同じにしてあります。オープニングとラストの映像が同じ、これが閉じたイメージです。
開かれたイメージは、のぶと嵩が後ろ姿で歩いていく青々と茂った並木道です、そして視点を振り上げたら見える青空とたなびく白い雲といった映像の爽快感です。のぶ・嵩夫婦の今後とか、このドラマのメッセージそのものをそこに浮かぶメルへン調の白い雲と抜けるような青空に託し、視聴者の皆さんの豊かな想像力に託してみました。それがラストカットです。