CITY

5月18〜26日/埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
作・演出/藤田貴大 衣装/森永邦彦(アンリアレイジ)
出演/柳楽優弥、井之脇海、宮沢氷魚、青柳いづみほか
☎0570・064・939(SAFチケットセンター) ※兵庫、豊橋公演あり

正義とは、なにか?

柳楽優弥といえば、15年前、映画『誰も知らない』で第57回カンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を14歳で受賞したことで知られる。若くして受賞したプレッシャーから、一時期は俳優の仕事を離れていたこともあるが、23歳頃から再び映画出演が急増し、翌年には『アオイホノオ』で連続ドラマ初主演。26歳の時に公開された主演映画『ディストラクション・ベイビーズ』では、ほとんどセリフのない役を圧倒的な存在感で演じきり、数々の映画賞を受賞した。その後の活躍は、ご存じの通り。

役者として思い悩む時期を過ごしてからの“復活”。そのきっかけは複数あるだろうが、業界の目を再び柳楽に向かせた理由の一つに、22歳で舞台初出演となった蜷川幸雄演出の『海辺のカフカ』(彩の国さいたま芸術劇場)があるだろう。

蜷川のもとで身体を絞り、新たな“芝居の筋肉”を作り出すことで、天賦の才が再び輝きを取り戻した、ともいえるのだ。4年ぶりとなる舞台出演に際しての注目は、そんなゆかりの地・彩の国さいたま芸術劇場に、柳楽が再び立つということ。そして、晩年の蜷川がそのクリエイティビティに惚れ込んだ劇作家・演出家の藤田貴大が、演出を手がけ本るということだろう。

本作のモチーフとなるのは“ヒーロー”。現代の都市を舞台に善と悪の相克を描く予定で、これまで故郷や子ども時代、架空の町を背景に物語を描いてきた藤田にとっても新たな挑戦となる。

出演は、妹の死の謎を追う役どころの柳楽のほか、同じ孤児仲間でともに行動する青年に、藤田作品2度目の出演となる宮沢氷魚(ひお)。また、事件の背後にいることが徐々に明らかになる男には、ナチュラルな演技でドラマやCMにも活躍の場を広げる井之脇海(かい)が挑む。

常に新しい可能性を模索する藤田が衣装担当に選んだのは、パリ・コレクションにも参加しているファッションブランド「アンリアレイジ」のデザイナー、森永邦彦。細やかなパッチワークや、光の当て方でさまざまな色が浮かび上がる素材など、斬新な発想と技術力を組み合わせたデザインに特徴がある。今後の日本映画・演劇界を担う柳楽たち俳優を、藤田の演出はどう照らし出すのか。その行方を見守りたい。

 

撮影◎西村裕介

世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#009
キネマと恋人

6月8〜23日/東京・世田谷パブリックシアター
作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演/妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえ、三上市朗、佐藤誓、橋本淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美、崎山莉奈、王下貴司、仁科幸、北川結、片山敦郎
☎03・5432・1515(世田谷パブリックシアターチケットセンター) ※全国公演あり

深い物語性と巧みな会話、観終わった後は一冊の長編小説を読み終えたような満ち足りた気分になる――。昨年は紫綬褒章も受章し、いまや日本を代表する“作家”の一人といっても過言ではない劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ。ウディ・アレンの映画『カイロの紫のバラ』を下敷きに、設定を日本に移して書き上げたのが本作だ。

今回は3年ぶりの再演。貧しい生活のなかで映画だけが生きがいのハルコに緒川たまき、銀幕から飛び出した“寅蔵”と、寅蔵を演じる俳優・高木の2役に妻夫木聡と、初演キャストの続投もうれしい。ただの翻案モノではない、独特の味わいをぜひ。

 

 

明後日公演2019芝居噺弐席目
後家安とその妹 

5月25日〜6月4日/東京・紀伊國屋ホール
脚本・演出/豊原功補 原案/三遊亭圓朝「鶴殺疾刃庖刀」、古今亭志ん生「後家安とその妹」
出演/毎熊克哉、芋生悠、森岡龍、広山詞葉、福島マリコ、古山憲太郎、豊原功補ほか
☎03・6412・7205(株式会社明後日)

元御家人だが、いまは放蕩三昧の生活を送る後家安(ごけやす)。妹のお藤は大名に見初められて側室になるが、御家人の身分に未練をもつ後家安は......。俳優の豊原功補が、落語と演劇の新たな融合を目指して脚本・演出を手がける「芝居噺」シリーズ第2弾。今回も前作同様、三遊亭圓朝の落語を原案にした新作で、単なる落語の舞台化にとどまらない構成だ。主人公の後家安には、NHK連続テレビ小説『まんぷく』での寡黙な森本役も記憶に新しい毎熊(まいぐま)ほかの若手俳優とは一線を画す毎熊が、圓朝の“人情噺”で新たな境地を見せる。