そこにいたのは…
思わぬ事態に呆然としているうち、奇妙な音が聞こえることに気付く。墓の土饅頭の中で、かぼそい泣き声がこもっているのだ。
急いで近隣住人たちを呼び、墓の土を掘りかえす。座棺の桶を開くと、女の遺体が座りこむ恰好で葬られている。六夜にわたって飴を買いに来ていた、あの女だ。
「この前、妊娠中に亡くなった隣村のかみさんじゃないか」と誰かが叫んだ。
そこで甲高い声が響きわたった。亡骸の白装束の裾から、ちらちらと小さな手が覗いている。急いで遺体を持ち上げてみると、そこにいたのは。
「桃色の肌で元気に泣き叫ぶ、生きた赤ん坊でした」