「役者としての可能性を広げるためには、型にはまるのは不自由だと思っていて。いかに道草を食うか、なんてこともよく考えます。」

型にはまるのは不自由

出演作を選ぶとき、僕は「自分が演じている姿が想像できない」ということを基準のひとつにしています。役者としての可能性を広げるためには、型にはまるのは不自由だと思っていて。いかに道草を食うか、なんてこともよく考えます。「何、この役!?」と面食らうくらいのほうが普段使ってない筋肉を鍛えられる感じがして、演じていて快感があります。

たとえば5月に僕が出演させていただく、松尾スズキさん原作・ノゾエ征爾さん演出の舞台『母を逃がす』(新型コロナウイルスの感染拡大の影響で全公演中止に)もそう。自給自足の生活を営む東北のコミューンで繰り広げられる物語なのですが、台本を読んでもさっぱり意味がわからない! 松尾さんの作品が自分に馴染むのに、一体どれくらい時間がかかるのか……。(笑)

でも、松尾さんが訴えかけていることはなんとなくわかるんです。この作品の根底にあるテーマは「差別」。松尾さんも僕と同じ福岡出身。九州には被差別部落の問題が根強く残っていて、学校の授業でも歴史的背景について勉強しましたし、むしろこの物語の設定はすんなり受け入れることができた。やりきったらまた新しい世界が見えるのだと思います。