「日本人って、頑張ればわかり合えるとか、何があっても切れない絆がある、とか考えがち。でも、合わない人とは合わない、たとえ血ががっていても。」(さかもとさん)

 

大塚 膠原病を発症された後に発達障害の診断を受けたことも、作品を通じて公表なさっていますよね。

さかもと いっときは、人とコミュニケーションがとれないほど心身ともに状態が悪くなってしまいました。膠原病は長年の働きすぎも原因なのですが、心の問題については、精神科の主治医から「ご両親があなたにしてきたことは、一種の虐待なんですよ」と教わって。先生は「それで親を恨むのはよくないけれど、無理に親子関係を繋ぐ努力はしなくていい」と言ってくれました。それで、思い切って完全に縁を切ることを決めたのです。

 

きょうだい間で差をつけて関係を壊す親

信田 家族とうまくいかないという相談で最近増えてきたのが、きょうだいとの関係です。

大塚 それは取材をしていても感じますね。「弟のほうがかわいがられていた」「私だけ学費を出してもらえなかった」など、親からの愛情や経済的資源の配分に差があると、大人になってからもわだかまりが消えない。

信田 「きょうだい格差」には、ある時期までジェンダーの影響がものすごくあったんです。明治から続く長男相続制で、どんなに出来が悪くても教育を受けられるのは息子だけ。彼らよりはるかに成績がいいのに、親に進学を反対されたという娘たちの話をカウンセリングで聞くたびに、私は悔しくてなりませんでしたよ。

さかもと 私も親に大学進学を猛反対されました。でも父は、自分が高卒で苦労しただけに、弟には「必ず大学へ行け」と必死で。「成績がいい私に投資したほうが効率がいい」と訴えたんですけど、「きょうだいへの思いやりがない」と母に殴られておしまい(笑)。弟は優しい子で、高校卒業後に福祉の仕事に就くことを希望したんです。でも、父は認めなかった。無理やり受験させ、浪人。留年を繰り返し、気の毒でした。

信田 息子にはいくつになっても手厚い援助をする一方で、しっかり者の娘には、「あの子はひとりで生きていけるから」と何もしてやらない。そればかりか、娘がコツコツ貯めたお年玉やおこづかいを親が使ってしまったりするんですよ。