「偉そうに啓発活動とか言ってますけど、実際は向こうからエネルギーをもらうことが多かったですね」

啓発活動でエネルギーをもらった

中村 謹慎中は詐欺被害防止の啓発活動をなさっていたんですよね。

田村 はい。謹慎が決まった3日後くらいから動き始めて、とにかく自分で調べて、活動させてもらえないかと電話をかけまくりました。最初は老人ホームを中心に電話をかけまくったんですが、なかなか受け入れてもらえなかった。

そんな時、とある老人ホームの方が、「ここではスタッフがお年寄りたちを守っている。むしろ、デイサービスに通う方たちに必要な情報なんじゃないか」というアドバイスをくれて。その方が千葉のデイサービスにつないでくださり、7月から活動をやらせてもらいました。振り込め詐欺の手口や注意喚起、予防法などを詐欺の標的になるお年寄りに伝えるんです。

中村 どれくらいのペースでいらっしゃったんですか?

田村 飛び込みでお願いするのを含めたら、週4ペースです。

中村 すごいですね!

田村 時間はたっぷりありましたから。でも実は僕、7月にやっと千葉のデイサービスが受け入れてくれて、1日活動した直後に足の指を骨折して行けなくなったんです。せっかく予定を組んでくれたのに、自らそれを断るわけで、「あいつなんやねんと思われてるに違いない」「本気を疑われるんじゃないか」と思い詰めて、メンタルが削られていきました。やっと前向きに動けるようになったのに、骨折でいろんな人に迷惑かけてるなと思って、それでガクンとなった。

中村 骨折はアクシデントですからどうしようもないけれども……。

田村 わざとじゃないにせよ、やっとの思いで動いてくれた人をまた裏切ることになってしまうわけですから。だから活動に行けなかった8月が精神的に一番しんどかったです。

中村 ずっと自分を責めていた感じですか。

田村 そうですね。本当のことを言うと、動いている時は少し楽になるんです。何か“やっている”感で。それでやっと軌道に乗りそうなとこで骨折したから、なんやろうと思って。そんなときに、デイサービスで出会ったおじいちゃん、おばあちゃんたちから、「復帰のことなんか気にすることないよ、人生にとっては大したことない。大丈夫や」って言われたことを思い出したんです。

おじいちゃんおばあちゃんに言われると、何か説得力があった。「ここからどうするかのほうが大事やで。あんたこうやってやってるから大丈夫」って。

中村 すごい励みになりますね。

田村 めちゃめちゃなります。偉そうに啓発活動とか言ってますけど、実際は向こうからエネルギーをもらうことが多かったですね。