
概要
旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、調査研究本部の伊藤徹也主任研究員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。
自民党は7月の参院選に敗れて、衆参両院で少数与党に転落した。このため、10月に総裁選を行い、高市早苗・総裁を選出した。連立相手は組み替わり、公明党から日本維新の会になる。多党化時代と言われる中で、政治の安定をどう取り戻すのか。野党のあり方も問われている。自民党総裁選に関連する9月の放送を踏まえて、出演した伊藤俊行編集委員に聞いた。
多党化時代政治の行方
保守の中で分裂
「多党化はもはや一つの流れだと思う。自公で過半数の維持は厳しい。様々な価値観の人たちに加わってもらうことで、政権をより良くする方向を模索せざるをえない」=細野豪志氏
「政治が不安定化する時こそ、重しになるような政党がいないとダメだ。それは今のところ、自民党と立憲民主党であり、苦しくても、しっかりしないといけない」=辻元清美氏
「参院選の結果は既成政党の否定でもある。必ずしも『岩盤保守』が離れたから、自民党が敗れたわけではないと思う。既成政党はどんどん、やせ細る可能性がある」=伊藤惇夫氏
伊藤徹9月17日の放送では、細野豪志・自民党衆院議員、辻元清美・立憲民主党参院議員、政治アナリストの伊藤惇夫氏を迎えて、多党化時代の政界再編の行方を議論しました。多党化時代と言いますが、自民党は久しく単独で政権を担えず、自公の連立政権は四半世紀を超えていました。自民党がいよいよ追い詰められた現在の状況をどう見ればいいのでしょうか。
伊藤俊 保守の中で分裂が起きていることが、今日の多党化の特徴だと思います。中道保守の国民民主党、新興保守の参政党、あるいは改革保守の日本維新の会など、様々な勢力が存在感を示す中で、自民党は相対的に沈んでしまっているように思います。昨年の衆院選、今年の都議選、参院選と、その傾向ははっきりしています。
これまでは、リベラルの中で分裂が起きていました。自民党と競い合う2大政党を目指して民主党が生まれましたが、政権を取った途端にバラバラになってしまいます。自民党に対抗する軸が定まらない状況が続いたことは、結果として自民党の政権維持に有利に働きました。自民党は、そこに安住してしまったように思います。
伊藤徹世界を見ると、伝統的な政党が重しの役割を失っていくと、左右のポピュリスト政党が国民の不安をあおり、社会が分断されるという現象が起きています。こうした政治の過渡期の中で、しかも少数与党に追い込まれた中で、今回の自民党総裁選は行われました。政党のあり方、多党化時代のあり方、野党との向き合い方など、新しい政治の局面に合わせた骨太の議論を期待したのですが、あまり代わり映えしないように感じました。