必要な制度検証

「我々のようなデパートのような政党と、専門店のような政党が並立する状態になっている。中選挙区制の方がいろいろな民意をすくうことができる。選挙区調整もやりやすく、連立を組みやすくなるだろう」=林芳正氏

伊藤徹番組は、自民党総裁選に出馬した候補者らも招きました。9月18日に出演した林官房長官(当時)は、現在の小選挙区比例代表並立制を中選挙区制に戻すことを訴えました。与党の総裁候補が、単独過半数より、まずは比較第1党を目指す選挙制度改革を打ち出したところに、自民党の置かれたつらい立場を感じました。

政治についてのおもや政策や主張©️日本テレビ
政治についてのおもや政策や主張©️日本テレビ

伊藤俊私は、林氏の主張を興味深く聞きました。言わば自分たちの土俵を変える提案ですので、勇気が必要だったでしょう。平成の政治改革以来、日本は政権交代可能な2大政党制を目指してきましたが、幻想に近かったと思います。多党化もにわかに起きているわけではなく、この30年、多くの政党が生まれては消えていきました。同じ並立制を採用するイタリアも同様ですし、単純小選挙区制を採用する英国でも多党化しています。日本では、議員定数の削減や「1票の格差」の是正は行われてきましたが、選挙制度と民意の反映の関係について、抜本的な検証は行われてきませんでした。

小選挙区制の功罪をはじめ、抜本改正の議論がすぐに動き出すことはないかもしれませんが、二院制のあり方も含めて、統治の仕組みを見直す必要はあるのではないでしょうか。野党を巻き込んで議論できるという意味でも、カギになる論点だと思います

解説者のプロフィール
伊藤俊行 読売新聞編集委員

伊藤俊行/いとう・としゆき
読売新聞編集委員

1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業。1988年読売新聞社入社。ワシントン特派員、国際部長、政治部長などを経て現職。

 

伊藤徹也 調査研究本部主任研究員

伊藤徹也/いとう・てつや
調査研究本部主任研究員

広島県出身。京都大学総合人間学部国際文化学科卒業。1998年読売新聞社入社。浦和支局、政治部次長などを経て現職

 
 

提供:読売新聞