水田玉雲堂 唐板

京都御所の産土神を祀る
上御霊神社の門前菓子。
平安時代初期に行われた
疫病除けの神事から
生まれた古い歴史を持つ

小麦粉と砂糖と卵、それに少しの塩を薄く堅くパリッと焼き上げた素朴な煎餅です。この水田玉雲堂、数年前に一度、店を閉めました。ニュースは瞬く間に広がり、「えらいこっちゃ!」と京都人は大騒ぎ。大げさではありません。何百年も親しまれ、皆が当たり前に「ある」と思ってきた菓子が突然なくなったのです。店の菓子はこの一種のみ、代々の店主が守ってきた味。閉店したのは店主が急逝されたためでした。

もとは上御霊(かみごりょう)神社境内に店を構え、応仁の乱以降、五百数十年にわたって作られてきた名菓。さらに遡ると、清和天皇の御世に疫病が流行した際、神前へお供えした疫病除けの菓子に起源を持ちます。

その後に店主の奥様が店を再開した時には安堵の空気が流れました。昔も今も、流行り病が人々を悩ませることに変わりはなく、厄災を祓う願いが込められたありがたい菓子なのです。