試行錯誤を重ねて
そこで、新たにノーブラで着られるTシャツを作ることに。榊原社長は「フィンランドではノーブラで白いTシャツ1枚の人がいました。暑くなってくるとノーブラでトップス1枚だったらラク。自分が求めているのが解放感と気楽さだとわかった。下着ではそれができないと考えて洋服にしました」と説明する。
日本の文化では、「ノーブラ」はバストトップの隆起が注目され、性的な目で見られる傾向がある。ブラジャーなしでTシャツを着るというスタイルでの外出はハードルが高い。だからこそ、「バストトップの隆起が目立たず締めつけない、でも外に出られるようなきれいなシルエットの服」としてブラレスウェアを目指した。
ブラレスウェア開発過程では、各国のブラジャーも研究。ブラジャーのパッドは東アジア圏が特に厚く、なかでも日本と韓国はトップクラス。一方で中国や台湾のパッドはもう少し薄い。フランスではパッドが薄く、バストのナチュラルな美しさを引き立てるようなタイプだったという。「おしゃれなランジェリーを着けたいというニーズは各国共通であると思いますが、バストトップを隠すことの優先順位は国ごとに違うように感じました」と鈴木さん。
理想のブラレスウェアを作るため、当初は手芸用品店で材料を購入し自分たちで作ってみたが、うまくいかない。鈴木さんの義妹がウェディングドレスのデザイナーだったことから相談。縫製してくれる工場を探し、試作品を製作した。
Tシャツの裏側、胸元部分にウレタンやメッシュ素材を検討。ダーツを入れるなど改良を重ねた。最終的に、ウレタン素材のクッションを内包したパッドを使い、締め付けないつけ心地を実現した。2024年にクラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」でブラレスウェアとして半袖Tシャツを販売。好評だったことから商品を追加し、最終的に購入金額600万円弱を達成した。
榊原さんは商品企画支援やデザインに関わってきたが、アパレルや下着は未経験。鈴木さんは財務や税務の専門家。2人とも未経験の分野だったからこそ、新たな発想につながったようだ。アパレルやインナーウェアの関係者からは「こんな発想は思いつかなかった」と言われたという。鈴木さんは「ブラトップもブラも胸を支えるという機能があって当たり前。支える機能をなくすということはあり得ないことだったのではないでしょうか」と分析する。