ブラキャンセル服を開発したキャンプの榊原さん(左)と鈴木さん
ブラキャンセル服を開発したキャンプの榊原さん(左)と鈴木さん
「締めつけがつらい」「汗で蒸れる」――。家に帰ってすぐにブラジャーを外す女性は少なくないのでは。実は「家ではノーブラ」な女性は5割に上るという調査もある。今年注目されたのが、ノーブラで外出できる服「ブラレスウェア」だ。胸部にはカップではなく、ウレタン製のパッドを縫いつけたつけ心地重視の作りで、「バストを支える」「バストシルエットを美しく見せる」という従来の役目よりも解放感を優先させた商品だ。“ブラキャンセル服”を開発したのは、アパレルメーカーの「キャンプ」(東京都渋谷区)。創業した2人の女性はアパレルでも下着メーカーでもない異業種の出身。常識を覆した「ノーブラで外出できる服」誕生の背景を取材した。

ノーブラで外出できる

「ノーブラでいい日が、あってもいい」――。ブラジャーなし、1枚で出かけられる服という大胆なコンセプトを掲げるのがブラレスウェアブランド「no-bu(ノーブ)」だ。Tシャツの裏面、バスト部分にウレタン製の特殊素材を縫い付けることで、バストトップの隆起をカバーする仕様だ。一般的に、ブラジャーにはカップの下部にワイヤーがあり、ブラトップは胸の下部にゴムを使用する。しかし、no-buではゴムやワイヤーを使用せずに解放感を重視。さらに、従来の下着一体型の服は乳房を包むカップを使っているものが多いが、no-buの服は胸の形状に合うような独自開発したパッドを使うため締めつけ感がなく着用できる。

no-buのブラレスウェア。裏側の胸元部分にある特殊パッドにより、バストトップをカバーする=キャンプ提供

「日本でブラジャーなしで過ごそうと思っても、いい商品が見つからなかった。だから自分たちで作ることにしたんです」と話すのは「キャンプ」の榊原美歩社長だ。
開発のきっかけは、鈴木愛子同社COOと2023年にプライベートで出かけたフィンランド旅行だった。各地のローカルサウナを巡ったときに、街中でもブラジャーを着けずにバストラインやバストトップの形がわかる状態で歩いている人を見かけて驚いたという。

フィンランドでは、バストについての価値観が日本とは違っていたのだ。
「フィンランドでは、マリメッコの水着を絶対に買って帰ろうと決めていたのに、現地で見たマリメッコの水着はすべてパッドが入っていなかった。日本で着ることはできないだろうと思ってあきらめました」と鈴木さん。

帰国した榊原さんが銭湯に行くと、日本人女性はみんな当たり前のようにブラジャーやブラトップを着けている。「なんでずっと着けているのだろう」と疑問に感じ、「ブラジャーなしで過ごそう」と商品を探したが見つからなかった。

ブラトップはブラジャーよりもつけ心地が良いが「胸の下のゴムがキツイ」(榊原さん)。「肩こりがあったから肩のあたりでバストを吊る作りが苦手」(鈴木さん)。2人の選択肢には入らなかった。