自分を肯定できるのは親のおかげ
古内 同調圧力が強い日本社会の中で、ドリアンさんは「人と違うこと」をポジティブに受け止めていらっしゃる。それだけ肯定的にとらえられる一番の原因は何でしょう?
ドリアン 生まれつき、目立ちたがりな性格というのもありますが、根本的なところは親のおかげだと思います。とくに、母親の存在が大きいですね。
古内 どんなお母様だったのですか?
ドリアン 10年前に亡くなりましたが、とにかく朗らかな人だったと思います。一緒にテレビを見ていて、ゲイやトランスジェンダーの方が出てきても、なんの抵抗もなく受け入れていましたし。母が大ファンだった俳優のルパート・エヴェレットがゲイだとわかってからも、まったく気にしていなかった。何かの折に「結婚するんだったら、日本人でも外国人でも、男でも女でもいいのよ」ってポロッと言ったんです。その言葉が心の中に強烈に残っていたので、自分がゲイだと告白しても母には絶対に否定されないだろうという自信のようなものがありました。
古内 その自信って、すごく大きいですよね。
ドリアン それに尽きると思います。子どものときに、親や家族からどれだけ愛を与えてもらえるかということが、生きていく上でとっても大切。私は母が生きているうちにカミングアウトはできませんでしたけど……。
古内 やっぱり伝えたかった、というお気持ちはありますか?
ドリアン 大きな舞台に立っているときに、今、ここに母がいればなぁと思うことはありますね。でも、母は多分気づいていた上で自分を愛してくれていたと思うので、隠し事をしていたという罪悪感はほとんどありません。
古内 カミングアウトされたとき、お父様の反応はどうでした?
ドリアン 当初は驚いていましたが、カミングアウトしてからのほうが、父とは仲が良くなったような気がします。それまでは、父のことをもっと偏屈な人間だと思っていたので、自分がゲイであることをスルッと受け入れてくれたときに、親というのは子どもが思うよりも懐が広いんだなと見直したくらいです。