わからないことは放っておいて尊重する
古内 現在のドリアンさんがあるのは、そうした家庭の影響が大きいんですね。私、ドリアンさんの言葉の中ですごく好きなのが「わからないことは放っておいて尊重する」というフレーズ。なんて素敵な言葉なんだろうって。
ドリアン だって、自分のことだってわからないのに、他人のことなんてわかりませんから。「認め合う社会」なんて、なんだかウソくさくって。
古内 誰もが互いに認め合うことなんて無理ですよ。でも、認めてくれなくてもいいから、邪魔はしないでほしい。
ドリアン そう、理解しなくてもいいから、相手のことを否定せず、干渉もせずに放っておく。そして、本当に困ったときは、お互いに手を差し伸べて助け合えばいいんですよ。
古内 実は私は随分前から選択的夫婦別姓に興味があります。私自身昭和の女なので、夫と同じ苗字になると「嫁」になり、嫁が夫の家族の所有物になってしまうような気がして。でも、そういう女性主人公を描いてみたら、多くの読者から「ワガママ」だと言われてしまいました。理解してくれなくていいから、黙って静かに尊重してほしいと思うのですが。なぜ、選択でも嫌だという人がいるのか不思議です。
ドリアンさんも2024年にKILAさんとご結婚なさったときに、「戸籍上、彼を“妻”にしてしまったのが申し訳なかった」とおっしゃっていましたね。
ドリアン 彼はトランスジェンダー男性で、自分も彼のことを女性とは思っていません。しかし婚姻届では、「妻(女性)」の欄に名前を書いてもらわざるを得なかった。さらに、今の日本の法律だと、自分と結婚したことで、彼は戸籍を女性から男性に変えたくても変えられないという状態になってしまった。それが申し訳なくて。それでも、2人ともこれからもずっと一緒にいたかったので婚姻届を出したんですけれど。
古内 最近はLGBTQが一般的になってきているのに、いまだに同性婚は認められていない。
ドリアン 確かに、LGBTQの人たちに関する意識はここ数年で本当に変わってきています。なのに、社会の仕組みがぜんぜん追いついていない。「LGBTQの人もいてもいいですよ、許してあげますよ」という上から目線の感覚がいまだに強いから。それでも、10年前、20年前に比べたら、社会の仕組みも少しずつよくなってきていると信じたいですね。