(構成:内山靖子 撮影:本社 武田裕介)
夜食カフェは会社員時代の夢
古内 実は私も、作家デビューしたのは45歳と非常に遅くて。ドリアンさんと一緒で、それまでは映画会社で20年間サラリーマンをやっていました。物書きの世界にもナチュラルボーンの天才肌の方たちがたくさんいらっしゃいますけど、私の場合は、長年、会社員をやっていてよかったなと。
ドリアン それはなぜですか?
古内 作家の世界も厳しいので、もし20代や30代でデビューしていたら、「自分はこの人よりも書けない」とか様々な悩みが生まれて自滅していたんじゃないかと。とくに、デビューしてから2、3年の間はまったく売れず、年収30万円とかだったから(笑)。若い頃にデビューしていたら、そんな生活に耐えられなくて、多分つぶれていたでしょう。
ドリアン アタシも会社員時代の経験は決して無駄ではありませんでした。会社の人たちも、アタシがドラァグクイーンをしていることを容認してくれていましたし。
古内 私の場合、作家と会社員の両立はできませんでした。映画の宣伝プロデューサーの仕事は、それはもうハードで…。ポスターを作ったり、パンフレットに載せるコメントをいただいたり。それこそやらねばならぬことが山積みで、会社を22時に出られたら「今日は早く帰れる」って思うほど。
ドリアン なるほど、そんなときにシャールさんの夜食カフェがあれば……。
古内 そうなんです。22時過ぎに会社を出るとラーメン屋か居酒屋しか開いてない。私はお酒が飲めないので、23時から営業している夜食カフェがあったら、どんなにいいだろうって。
ドリアン つまり、”23時からの夜食カフェ”は先生のユートピアなんですね。
古内 おっしゃる通りです。私の夢を物語の中ですべて実現させたのが『マカン・マラン』。そこにぴったりハマったのがシャールさんなんですよ。
