歌舞伎界の未来を見据え、新作などにも挑み続けている坂東玉三郎さん。先達の教えの大切さ、年齢との折り合いのつけ方、創作のために大切な時間――75歳の今だからこその心境を語って(構成:篠藤ゆり)
自前で作った衣裳に込める思い
2025年10月、今まで演じてきた花魁(おいらん)を題名にした衣裳展が開催され、12点の衣裳をご披露しました。私より30歳、40歳上の世代が活躍していた頃の歌舞伎の衣裳は、じつは画家の方が衣裳を考案して絵を描いてくださっていたのです。
たとえば、六代目中村歌右衛門さんの舞台装置と衣裳は、日本画家の高根宏浩(たかねこうこう)さんが考案してくださっていたし、東山魁夷さんが打掛の絵柄を手掛けてくださっていました。
染物や織物、刺繍の職人さんも大勢いらっしゃいました。ですから「次はこの役をやるから、これをお願いね」と言うだけで、素晴らしい衣裳や舞台装置ができあがってきたのです。
でも、私の世代になった頃には、そういった贅沢な環境が失われていました。ですから、自分でいろいろと昔の資料を見ながら衣裳を考案し、職人さんと直接お会いすることから始めて作っていかないと、歌舞伎の衣裳が生まれない時代になったのです。
しかも職人の方々も減ってきていて、作る費用も高騰しています。制作側も役者も新しい衣裳を作ると採算が合わないからと、貸衣裳に頼ることになるわけです。
でも、私は先輩方のような思いを受け継いで、30代前半の頃に初めて自前の衣裳を作りました。