文化や芸術は、世界の情勢や社会から切り離されて存在しているわけではないので、世界のどういう状況のなかで自分が舞台に立っているのか、立ち位置はしっかり把握しておくべきだとも考えています。
たとえば、先日、あるドキュメンタリーで、1920年代に投資家たちがブロードウェイに投資していたことを知りました。投資するからには、利益が見込まれていたということです。
でも今は投資先が変わり、資金がなくなったブロードウェイは過去の作品の再演が増えて新しいヒット作が出なくなりました。そうなると、世界中の人たちがブロードウェイに憧れた全盛期の頃とはまったく違ってきます。「あぁ、世界は今、そういう流れなんだなあ」と実感しました。
この先、演劇など「実演」の興行をこれまでと同じように続けることは、いろいろな意味で厳しくなっていくかもしれません。
しかし、だからこそ実演は、心に潤いをもたらす文化的な豊かさになりうるのではないでしょうか。作り手は、お客様が、「これを観ることができてよかった」「楽しかった」「幸せだった」と感じるものを提供し続けるしかないと思います。
歌舞伎も、長い歴史のなかで見ると役者の総数も減ってきているので大変ではあります。でもそれを嘆くのではなく、確実にいいものをお見せしていくしかありません。長年ずっと応援してくださっている方や新しいお客様の期待以上のものにするために、よりいっそう丁寧に作り上げていくしかないと思っています。
数年前は体に痛みがあったり、精神的につらいことがあったりと、何とかしのいでいた時期もあったものの、「今日が一番大事」という気持ちで前向きに過ごしてきました。
今の私は、やるべきことを果たしていきたいという意欲を持っている状態ですので、今年も体力が許す限り、全力で取り組むつもりです。
