101歳の長寿を全うした生活評論家、吉沢久子さんが綴った、毎日の小さな喜びを大切に、前向きに悔いの残らない時間を過ごす生き方。エッセイ集『101歳。ひとり暮らしの心得』(中央公論新社)から幸せな暮らし方の秘訣を紹介します。

<次の世代へ伝えたい本当の豊かさ>

食事は人格形成に影響する

しつけが怪しくなってきたことに加え、もうひとつ残念なのは、食事に手をかける親が本当に少なくなったということ。味覚は幼いときに決まりますから、何を食べて育ったかは、人格形成に大きく影響します。

以前、前触れもなく親類の子たちがやってきたので、近所のおいしいトンカツ屋さんにヒレカツ弁当を注文して、それにはんぺんだけを使った白みそ仕立てのみそ汁を作って夕飯にしたことがありました。

盛り付けるとき、とろりと甘いみそ汁に、ちょっと和辛子を落として食べさせたら、ひとりの女の子から、「どうして辛子を入れるの?」と質問されました。

そこで、お汁粉を作るのに微量の塩を加えて甘みを引き出す例を挙げて、「かくれているからこそおいしくなる味作りの決め手だ」と、かくし味について説明しました。

 

(写真:stock.adobe.com)

 

すると、その子は母親がチャーハンの仕上げにスプーン1杯のマヨネーズを混ぜ込んだり、ココアを作るとき、お砂糖の中にちょっぴり塩を入れたりするのを思い出したようです。自分もその通りにしているのだけれど「これもかくし味?」と聞いてくるので、うれしくなりました。

家族のために料理をする母親の姿を見たり、手伝ったりしている子どもの中に育っているものの大きさを教えられた気がしました。

そのような経験を持っているかどうかは、人生の味わいに大きく関わってくるのではないでしょうか。家庭料理は三度三度の連続です。料理一品を作ったら残りの食材で次に何を作れるか、ということも知らなければなりませんが、それは日々の家庭での生活で学ぶのが理想的です。

自分のためにきちんとした食事が作れるということ自体、生きる自信にもつながると思います。

食事が健康な身体と心を作ることも含めて、子どもたちに伝えていってほしいものです。

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