(構成:内山靖子 撮影:本社 武田裕介)
シャールさんの魅力にノックアウト
古内 1作目の『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』を文庫化する際に解説を書いていただき、ありがとうございました。ドリアンさんは、どんなきっかけで『マカン・マラン』と出会ったんですか?
ドリアン アタシのファンの方たちから、「絶対読んでほしい!」というメッセージを以前から何度もいただいていて。あるとき、手に取ってみたら、主人公がドラァグクイーン。「これって、アタシの話じゃない!」と思いました。
古内 読んでいただいて、どんな感想を抱かれました?
ドリアン 物語のあたたかさと、シャールさんの魅力にノックアウトされちゃって。シリーズ全4巻を2日ほどで読み終えました。今でも時折ページを開いては、シャールさんの言葉に背中を押してもらっています。
古内 そうおっしゃっていただけると嬉しいです。
ドリアン そもそも、なぜドラァグクイーンを主人公にした作品を書こうと思われたんですか?
古内 私のデビュー作は、『銀色のマーメイド』というティーンエイジャーの性同一性障害を描いた作品で、この小説を描くにあたり、中学生の主人公たちを導く大人のメンターが必要だったんです。思春期まっただなかの中学生って、とても難しい年ごろでしょう。先生や親の言うことなんて聞きやしない。そんな子たちがどんな人の言葉だったら耳を傾けるだろう?と考えたとき、ドラァグクイーンの存在がふっと浮かんだんですよ。
ドリアン それはまた、どうして?
古内 男でもなければ女でもない。ファンタジーの世界からやってきたようなドラァグクィーンが突然目の前に現れたら、その人の言うことを素直に聞いちゃうんじゃないかと思って。
ドリアン それこそ、存在自体がびっくり箱みたいなものですからね。(笑)
古内 そうなんです。私自身も、以前、新宿で有名なドラァグクイーンの方にたまたま出会ったとき、ビックリして棒立ちになってしまって。今、思えば、本当に失礼なことをしてしまいました。
ドリアン いえいえ、まったく失礼じゃないですよ。私だったら「もっと驚きなさい」って思います(笑)。「きれい」とか「かっこいい」と言われるのも嬉しいですが、一番嬉しいのは、アタシを見たときに、相手が口をあんぐりとして言葉をなくしているときですから。
古内 本当ですか?
ドリアン ええ、「してやったり」って。(笑)
古内 そんな存在に、「自分のやりたいことをやりなさい」とアドバイスされたら、多感な中学生たちも耳を貸すんじゃないか、と。それで、『銀色のマーメイド』を書くときに、シャールさんに登場してもらったんです。
ドリアン 素敵! デビュー作にすでにドラァグクイーンが。
古内 はい。そうしたら、読者の方たちから「シャールさん、カッコいい」っていう感想をたくさんいただいて。それで、シャールさんがカフェを営む話を書いてみようとスタートしたのが『マカン・マラン』シリーズなんですよ。
