ドラァグクイーンの立ち位置は?
ドリアン 『マカン・マラン』シリーズを通じて、かれこれ10年以上、シャールさんを描き続けていらっしゃいますが、先生にとってドラァグクイーンはどんな存在なのでしょう?
古内 小説を書く上で気をつけているのは、「ドラァグクイーンは決して万能な存在ではない」ということです。「マジカルゲイ」や「フェアリーテイルゲイ」と称されて、映画やドラマの中で、ゲイやドラァグクイーンは主人公の悩みをなんでも解決してくれる存在として描かれがちですが。
ドリアン 「フェアリーテイルゲイ」のような存在が一般的になったのは映画『セックス・アンド・ザ・シティ』の影響だと個人的には感じていますね。この作品がヒットしてから、イケてる女性にはゲイの友達がいて、ファッションや恋愛に関してなんでもアドバイスしてくれるというパターンができあがってしまったので。
古内 私は、そういう万能な存在としてシャールさんを書いているつもりはないんです。悩みを解決するのはあくまでそれぞれの登場人物自身。シャールさんはそのきっかけというスタンスで。じゃないと、この物語の意味が違ってきてしまいますからね。
ドリアン シャールさんはやさしくて料理上手なので、様々な境遇の人たちが自然と吸い寄せられてきますよね。
古内 ドリアンさんもそうじゃないですか? いろんな方からお悩み相談をされているのでは?
ドリアン 確かに、メディアに出演するときも、「ゲストの悩みをぶったぎってください」みたいな依頼が多いのは事実です(笑)。悩み相談は苦手なので困るんですけどね。ただ、難しいのは、ゲイの中にもそれを逆手にとって「男の気持ちも女の気持ちもわかるから、話を聞くよ」というのをウリにしている方々もたくさんいるので、お互い様だとも思っています。
古内 なるほどねぇ。
ドリアン ドラァグクイーンの立ち位置を、世間がまだつかみきれていないんですよ。ある番組では若手芸人さんみたいなことをさせられるし、ある番組ではひたすら恋愛相談とか。でも、中にはパフォーマーとしてきちんと扱ってくれる番組もある。世の中の足並みがまったく揃っていないので、そのあたりは、アタシも頑張らなきゃいけないと思っています。