働き方をめぐって募るイライラ

実際、テレワークを実施している中小企業は東京都内でも26%に過ぎない(4月8日東京商工会議所発表)。また、夫婦ともに在宅勤務にできても、夫婦共働き世帯はかえって小競り合いが起きることが多い。

大阪府に住む40代の会社員ユリナさんは共働き。夫婦そろっての在宅勤務3日にして、早くも我慢の限界に達したという。

「私の会社はIT系企業ということもあって、社の方針で3月からすでにテレワークを開始していました。小学生の息子も休校になり、リビングで息子は自習、私は仕事をしてなんとか回していたんです。それが4月に入って夫も自宅勤務に。そのうち働き方をめぐってイライラが募ってきて……」

営業職の夫は同僚やクライアントとのミーティングが多い。多くの時間をオンライン会議に費やすため、寝室を“仕事部屋”に変えて、1日のほとんどをそこで過ごす。

「夕飯時にも会議を設定するので、私たちは静かにして夫の会議が終わるのを待っています。日中も、息子の集中力が切れたら散歩に連れて行って遊ばせるのは当然、私の役目。夫は気にもかけず仕事を進め、あげく、疲れて昼ごはんに出来合いのものを出すと、『また買ってきたの?』と文句を言う。もう限界です!」

二人ともが出社し、子どもが学校や学童に通っていた時はうまく家事・育児を分担していたつもりだった。保育園時代は週2日夫がお迎えに行き、妻は残業もできた。

「でも今思えば、夫がお迎え担当の日も夕飯の作り置きは私がしていたし、学校関連の細かいやり取りなど、“見えない家事”は全部私がやっていた。男女の違いを改めて感じて、『このままじゃいけない』ってはっきり言うことにしたんです」

在宅勤務を始めて1週間、ついにユリナさんが不満をぶちまけると、夫は驚いた顔で不機嫌そうに「わかった」と答えた。一瞬険悪になったが、翌日から夕方に息子を連れ出してくれるようになった。

「喧嘩にはなったけど、言いたいことを言えたし、夫も行動を変えてくれたからよかった。本当は言わなくても先に気づいてほしかったですけどね」