夫婦の危機は関係を見直す機会

最後に取材したケースのように、一見コロナ騒動と無関係の不倫や浮気問題も、「実は、有事の際によく勃発する」と言うのは、夫婦カウンセリングを専門に行う「ライフデザインラボ」の安東美紀子さんだ。

「今回に限らず、震災などの災害時や、大きな事件が起きた時は、誰しも不安になります。だから、誰かとつながりたくなる。それまでの夫婦関係や承認欲求が満たされていないと、浮気に走る人も実は多いのです」

実際、ここ1ヵ月、オンラインでのカウンセリングの申し込みが増えていると言う。夫婦喧嘩やセックスレスなど、これまで水面下に隠れていた問題がコロナ騒動のストレスによって浮上するのだ。そこに共通するテーマとは、「コミュニケーション不足」。

「外出自粛によって今起きている家庭内の不和も、結局はコロナのせいではなく、以前からあったズレが大きくなってしまった結果と言えるでしょう」

価値観の違いに気づいた時こそ、コミュニケーション方法を見直す時だと安東さんは言う。

「たとえば、『命より仕事が大切なの?』とか『共感力がゼロ』という言葉にあるように、情報の受け取り方や感じ方は夫婦それぞれ違いますし、男性は女性同士のようには共感しないもの。なぜわかってくれないのと嘆く前に、まずは不安や大変さに共感してほしい、と言葉で伝えることも大切です」

だが、夫婦だとつい感情的になってしまいがち。そんな時は一呼吸置いて、相手を「ルームシェアしている親友」と考えてみるといいという。

「親友なら、『今すぐお風呂に入って!』と言う前に『子どものことがどうしても心配になっちゃうから、できたら先に手を洗ってきてくれるかな』など前置きを入れますよね。そんなふうに、自分と相手との間に境界線を引くことが大事です」