イラスト:花くまゆうさく
テレビや新聞、街中のポスターなどで見かける特殊詐欺への注意喚起。この瞬間にも、高齢者を中心に大切な財産が奪われ続けています。今回は、100人以上の詐欺師と電話で対峙したルポライター・多田文明さんががダマされない人になるコツを伝授します。(構成=吉川明子 イラスト=花くまゆうさく)

被害が少ない県は

私は20年以上、特殊詐欺や悪徳商法の実態を取材してきました。ダマされたふりをして詐欺師と電話で会話をしてきたなかでわかったのは、“ダマす手口には基本のストーリーがある”ということ。具体的には、「信頼できる人物を騙り、相手を混乱させるような事柄を伝え、お金をダマし取る」流れです。

しかも、話の「入り口(人物や事柄)」と「出口(お金の盗り方)」に時流が反映されるため、気をつけるべき誘い文句が多種多様なのがやっかいなところ。入り口でいえば、すでに「新型コロナウイルス」関連の詐欺も確認されています。

ただ私が思うに、ダマされやすい人には特徴があるんです。たとえば、詐欺師は会話を通して情報を引き出すため、「話し好きな人」は要注意。最近出てきた「アポ電」という手口の場合、アンケートと偽って電話で家族構成や資産を聞き出し、ターゲットにするかを判断します。

特に冒頭で「コロナが流行っていますが、体調は大丈夫ですか?」というような世間話をされると、話し好きな人は日常会話のつもりでプライベートなことを自ら話してしまう。ちなみに「オレオレ詐欺」の被害が比較的少ない県は、青森や秋田。いずれも方言を詐欺師が聞き取れず、情報をとりにくいからではないかと言われています。

また、「パニックになりやすい人」は、動揺すると手段を選ばず早く問題を解決したいと思いがちです。今回、新型コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが品切れになる騒動がありました。正しい情報を確認せずに焦って買いに走った人は、詐欺被害者予備軍と言ってもいいでしょう。

また、スーパーで「特売品」と書かれた商品を見たとき、欲しくもないのに飛びついてしまう人も、「安い=買う」と条件反射のような行動をしがちなので、電話で言われたことをそのまま信じ込んでしまう傾向は強いと思います。

そして「やさしい人」。詐欺師の話を、「最後まで聞かないと悪いかも」「困っているから助けないと」などと思ってしまう思考の持ち主です。詐欺の手口のひとつに、「今日はいい天気ですね」というような「はい」と答えざるをえない話を繰り返し、「いいえ」と言いづらくさせるものがあります。人の話を長い間聞き続けると、きっぱり断りづらくなるため、気を使って話を聞いているうちに、相手の思うがままに話を進められてしまうのです。

 

ダマされやすいのはこんな人

●話し好き
社交性の高さは時にマイナスになることも。個人情報の取り扱いは要注意!

●パニックになりやすい
インターネットの情報や人の話は鵜呑みにせず、自分で調べ、考える習慣を

●やさしい
相手を思いやれる人は、感情移入しやすい面もあることを忘れずに