カメラを向け続けられるストレス

これも私のような者と一緒にしてはいけないかもしれませんが、どこへ行っても何をしても、人の目があり、カメラを向けられるストレスは、経験したことがない人にはなかなか理解できないと思います。

子役時代には、子どもらしいちょっとした粗相を写真に撮られ、「メイコちゃん大失敗!」などと雑誌に書かれたこともあった。母が悲しんでいたのを覚えています。19歳のころ、「誰も私を知らないところへ行きたい」と思い詰めて、湘南の海へ飛び込んだこともあるくらい。

また、私たちは悩みがあったら、親しい友だちにちょっとグチをこぼすこともできます。でも美智子さまにはそれも難しい。何もお言いになれないことが、「声を失う」につながったのかもしれないと思うと、おかわいそうでした。

年齢を重ねてきますと、疲れから「今日は一日パジャマでいたいなあ、お化粧もしたくない」という日があります(笑)。でも美智子さまは、それもおできになれない。本当に大変だとお察し申し上げます。ですから昨年、天皇陛下が退位の意向のにじむお言葉を発表なさったときは、美智子さまのためにも心底ほっとしました。ご公務から退かれた後は、お二人仲良く、心安らぐ毎日をお過ごしいただきたいですね。

そのために、カメラをほんの少しでも、遠ざけてさしあげてほしいのです。美智子さまが気軽な普段着で私たちの隣を歩いていらしたり、ご夫婦で皇居の周りをジョギングなさったり(笑)。そんな楽しい毎日を送ってくださったら素敵じゃないでしょうか。それは「遠い人におなりにならないでください」と声をおかけした58年前から変わらない、私の切なる願いでもあるのです。