加山雄三さんのアドバイス
清水さんにその面白さを教えてくれたのは、油絵の名手としても知られる加山雄三さん(87)だ。
2000年ごろ、加山さんは自宅で油絵を見せてくれた。清水さんが教えを請うと、「絵は自分で考えて描くんだ。そのほうが面白い」。加山さんの筆の使い方、洗い方を見よう見まねで学び、油絵にのめり込むようになった。
09年から箱根のホテルで1年間、ものまねショーをやった。妻も一緒に来てくれ、週末以外は箱根のホテルで二人で暮らした。夜のショーまでは時間があるので部屋で油絵を描いたり、温泉に入ったりとのんびり過ごしながら、「還暦後はこんな暮らしもいいな」と思った。清水さんの長野の実家は、温泉を引いた露天風呂も完備していた。
息子三人はすでに独立したので、新宿区に建てた8LDKの一軒家は売った。
ダウンサイズした家に引っ越し、長野に引っ越す準備を始めた。ところが、移住の提案に、妻はどうしても首を縦に振らなかった。
清水さんが24歳のときに結婚。仕事で多忙だったが、自分では夫婦仲は悪くないと思っていた。
移住が嫌な理由を聞くと、妻は「田舎暮らしがしんどい」。東京生まれの東京育ち。友人もいない長野で生活する気持ちにはなれなかった。
清水さん夫妻は当時、妻の母親と同居し、孫たちも誕生していた。
「東京で孫たちや母の世話をしたい」「友人たちと移住で離れたくない」と妻は譲らなかった。清水さんも譲らず、13年に「卒婚」の決断に至った。
一度、言い出したらやらないと気がすまない夫の気性を知っている妻は、反対しなかった。清水さんは古くて広い実家をリフォームし、居間に囲炉裏をこしらえ、14年に移住した。
