「小説は、いくらアイデアがあっても論理的な作業を長時間かけてすることでしか形にできない。」(羽田さん)

清水 羽田さんには、書いてるうちにハイな状態が訪れたりする? 途中で筆がどんどん滑り出して気持ちいい状態になれば、もう空腹なんて気にならなくなるよね。

羽田 そういう特殊な集中は、長時間続かないですからね。いまは本業以外のテレビやラジオの仕事が入っていることで、時間が限られて、逆に集中できるようになりましたけど。小説は、いくらアイデアがあっても論理的な作業を長時間かけてすることでしか形にできない。だから、そういう集中の仕方をすることはないんだと思います。

清水 じゃあ自分を、「まあ先走るな」「落ち着け」って言い聞かせながら書いていくようなものだね。

岩井 確かに、ネタは5分程度の尺なので、勢いで書ききれるのかもしれませんね。

羽田 岩井さんのエッセイを読みましたが、この先もっと長いものや、小説を書く予定はありますか?

岩井 ぼくが書いてきたエッセイは、1本あたり2500~3000字くらいなんです。これ以上長いものになったら、ジャンルがなんであれ、いま羽田さんの言ったような冷静さが求められる。まだ、長いものをどう書けばいいのか、まったく想像がつかないです。

清水 長篇や短篇は、得意不得意がわかれるものなの?

羽田 ぼくの17歳のときのデビュー作は、400字詰め原稿用紙で400枚の長篇だったんです。

岩井 めちゃくちゃ長いですね。

羽田 それこそ、文藝賞を受賞した直後に『婦人公論』で島本理生さんと対談したとき、当時、短篇をたくさんお書きになっていた島本さんに書き方を尋ねたくらいで。

清水 どんなアドバイスをもらったの?

羽田 「思いついた景色の断片を切り取ればいい」って。島本さんには、短いなかで読者にパッと光るものを印象づけられる短篇のほうが自由度が高い。半面、ぼくは長いほうが話の流れを順当に書きやすくて。

岩井 ネタも「2分や3分にまとめてくれ」と言われたら、起承転結を捨てなければいけないので、それはそれで難しいです。

清水 いまはネタ番組がどれも短くなっているから、できることが限られてきちゃうしね。早くいまの状況が落ち着いたら、ライブをしたり、みんなでおいしいものを思い切り食べに行ったりしたいね。

岩井 それまでは、白くてふわふわしたものに頼るしかない。

清水 ときどきダイエットもしながらね!


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