藤井聡太は何がスゴいのか?
私は2019年2月の朝日杯将棋オープン戦決勝で藤井七段とはじめて対局して敗れた。
それによって、彼の強さがどこにあるのかを感じた部分もあったが、朝日杯は持ち時間が各自40分の早指し棋戦だ。この一局だけで、彼の実力のすべてを推し量ることはできない。ましてこのときからすでに一年が経っている。彼の年齢を考えたなら、そのときからさらに強くなっているのは間違いない。タイトル戦に出場するようになっていく10代後半、20代前半の成長スピードは速い。アマチュア時代やプロ一年目と違い、トッププロと対局する機会が増えていけばなおさらである。そういう一年の密度はとにかく濃いものになる。
藤井七段は詰将棋が得意で、小学生のうちに詰将棋選手権で優勝している。それとも関係するのだろうが、「読みのスピードが速い」というのが長所になっているのは強く感じた。それに加えて、序盤の戦い方をよく勉強している。そのため不利にならないように序盤を指せる。そのうえで中盤戦からは読みのスピードを生かして相手より頭ひとつ前に出ていくのだ。
そうしたスタイルは、藤井七段に限らず、いまの将棋で勝てている人たちに共通している特徴といえる。その中でも藤井七段は、読みのスピードが突出している。
読みのスピードが速ければ、持ち時間の短い将棋に適性が高いというわけではないが、藤井七段が朝日杯将棋オープン戦を連覇した中ではその長所が生かされていたのだろう。
藤井七段がこれからもますます強くなっていったときに、世代として考えるのではなく、あくまで個人として見ていくべきだろう。これから彼がどこまで強くなるかは、簡単には推し量れない。藤井七段の今後は未知数といえる。
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