恋から離れてある「自立」
吾がために死なむと云ひし男らのみなながらへぬおもしろきかな
これは作者の初期の歌です。相当な修羅場をくぐって来たことを想像されますが、悲しいのはそんな不誠実な男性たちに憤るのではなく、そんな世の中を「おもしろきかな」と自らを冷笑と嘲りを持って見ている点です。この時点で作者はすでに男性への信頼感を失い、男女間の煉獄を感じているのでしょう。
生きながら針に貫かれし蝶のごと悶へつゝなほ飛ばむとぞする
この蝶の歌には作者のナルシシズムを感じます。「針に貫かれし蝶」という非常に美的な姿に自己投影をしつつ、それでも飛ぼうとするその姿は悲痛です。蝶という儚く美しい生が、針で刺されている姿は美しく生きることの罪を自ら背負っているように感じます。
しかし作者はそういう状況に振り回されていただけでもありません。次の歌には、ひとり強く生きる、女性の姿を感じることができるでしょう。
二人居て恋のなげきを見るよりも安く寂しくひとりあるべき
恋人同士二人、やすやすと広がる恋のなげきを見るより、「安く寂しく」も、ひとりあるべき、という言葉には精神的な強い自立を感じます。この「安く寂しく」は作者の価値観というより、世間の認識と取るべきでしょう。「安く寂しくひとり」を選んだ人は、決してそのひとりを安くも寂しくも感じていなかったはず。むしろ恋から離れることにこそ、自立がある。そんな声が聞こえて来そうです。
