青年はなぜ
死んだのか

カルテから読み解く
精神病院患者暴行死事件の真実 

著◎嶋田和子
萬書房 2000円

亡くなった2人のカルテ解読から
浮上してくるのは

あまりに壮絶で、あまりにも痛々しい。青年たちが体験した治療というのは、まさに地獄の苦しみだったのだろう。読んでいる間、ずっと胸がつぶれるような思いだった。

本書は、精神疾患で治療中の青年たちの死について、〈積み重ねると三〇センチほどにもなる〉という膨大なカルテの解読と取材により、驚愕の真相に迫ったものだ。

大部分を占める事例「I病院事件」とは、2012年に起きた職員による患者暴行死事件のことだ。保護室に入院中の青年が、職員たちから「暴行」に近い「ケア」を受け、頸椎骨折、頸髄損傷という大けがを負い、約2年寝たきりの状態の末に亡くなった。事件は容疑者逮捕時にテレビニュースで、監視カメラの暴行場面とともに報道される。しかし、その後の裁判で、誰一人として責任を問われない、という不可解な判決が下されたのだ。

もう一つは、最大一日に47錠もの向精神薬を処方されるという薬漬けの末、自身が通っていた大学の校舎から飛び降り自殺した青年の事例。

亡くなった2人のカルテ解読から浮上してくるのは、青年たちの「よくなりたい」という心の叫びと苦しみ。対する医者は「多剤大量処方」ばかりという冷酷さと無責任さである。日本の精神医療がこんなに酷いとは思ってもみなかった。

ごく普通の大学生だった2人は、ささいな心の不調から心療内科に行き、うつ病の薬を処方されたのをきっかけに、多剤大量処方の地獄へと落とされていったのだ。そして症状は悪化の一途をたどっていく。彼らの生きた証しと尊厳を取り戻すように、カルテを丁寧に読み込んだ著者の「どちらが狂気だろう」という憤りに満ちた言葉が心に残る。