YouTubeの作業用BGMに思うこと  

ヒャダ 最近はAIの音楽品質もすごくて。(既存曲の)リミックスも作るんです。  

能町 この間YouTubeで、「アンパンマンのマーチ」のソウルアレンジみたいなやつをたまたま見たんですよ。黒人ソウル系ボーカルが歌ってる感じのアレンジで、何の違和感もなく聞けちゃったんです。バンド編成でコーラスもついてるし、曲だけじゃなく動画も作ってて。「どこまでできちゃうの?」と思いました。

ヒャダ (CANDY TUNEの)「倍倍FIGHT!」は実は1976年の曲だった、という動画もあって。これすごくて、ボーカルラインやメロディラインも変えてるんですよ(といって聞かせる)。  

能町 あ、原曲の(架空の)古いバージョンを作ってるってこと? こんなの出てきたら、どうしたらいいんでしょうね。  

ヒャダ しかも、よくできてるんですよ。  

久保 よくできてる。でも私が欲しい音楽のジャンルでは、全然AIが頑張ってくれてなくて。  

能町 何が欲しいんですか?  

久保 作業用のBGMをAIで作って、映像も付けて、アンビエントっぽい曲を3時間ずっと流し続ける動画がYouTubeに山ほどアップされてるんですけど、どの曲も短いんですよ。一定の音楽が3時間続くのかと思いきや、何の盛り上がりもないアンビエントっぽい曲がすごく短いターンで終わって、すぐ次の曲に移る。いや、もうちょっと聞かせろよって。
  
──言われてみるとあの手の動画、似たようなテンポの曲が移り変わっていきますよね。曲としてちゃんと聞きたいってことですか?  

久保 1つの曲を、もうちょっと気持ちよく聞きたいんですよ。アンビエント系の曲を作る人って、たとえば10分の曲だったら「その10分をいかに気持ちよくさせるか」を考えて作ってるわけですよね。でもYouTubeの作業用BGMは、それっぽい雰囲気の2、3分の曲を作っておいて、また別のそれっぽい曲をつなげる……というのをただ3時間やってるだけで。「AIのくせに長い曲も作れねえのかよ!」って思っちゃう。AIが長い曲を作るのは、まだ難しいんですかね?  

ヒャダ もしかして安いプランとか無料プラン(*)で作ってるからじゃないですか? 高いプランならもうちょっと長いのが作れたりするのかもしれない。
*音楽生成AI「Suno(スーノ)」の場合、バージョンアップされるごとに1曲の最長時間が延びている。v3は2分、v4は4分、現時点で最新のv5.5では8分まで対応している。ただし無料ユーザーが使えるのは古いバージョン。  

久保 「短い曲しか作れないなら、ハンス・ジマーのサントラを買って聞いた方が全然いいわ!」と思うんですけど。だから10分くらいのアンビエント曲をちゃんと作ってた人たちは本当に偉いなと思う。気持ちよさを大事にしてちゃんと曲作ってるから。  
  
能町 文章だと、どのくらいAIでいけるんでしょうね。前に、「AIを使って小説を書いた」(*)というのが話題になってたけど、あれは部分的に使ってただけだし。
*第170回芥川賞受賞作である九段理江「東京都同情塔」は、「5%がAIで書かれたもの」と作者が明かし、話題を呼んだ。2025年、同じ作者による「95%生成AIで書いた」という短編小説「影の雨」が発表された。  

ヒャダ 短歌はもう、AIでできてしまうんですよね(*)。
*余談だが、2025年の『探偵!ナイトスクープ』に「AIに頼りすぎる12歳の娘」という依頼があった。AIで作った人権標語で娘が表彰されたことを問題視した父親による依頼だったが、探偵が調べてみると、AIで作って表彰された子供が他にも複数いた。  

久保 短歌はできそう。

ヒャダ でもAIは、自分の作った短歌がいいのかどうか、わからないんですよね。そうそう、俵万智さんがいいこと言ってたんですよ。「作る過程が楽しいのに、そこを機械にやらせるのはすごくもったいない」みたいなこと(*)。
*「作る過程そのものが楽しいのに、そこを機械にやらせるなんて『なんで美味しいところを譲っちゃうの』と率直に思います」という発言。

能町 そりゃそうです。

2026年1月31日のこじらせライブより