高齢者のひとり暮らしは、健康管理やお金のことなど数多くの不安があります。しかし、これまで70年近くにわたってひとり暮らしを続けてきた88歳のイラストレーター・田村セツコさんは、「ひとりで生きることは、寂しさや孤独や、認知症の不安を抱きしめながら、それでも楽しんで暮らす冒険です」と前向きに語っています。そこで今回は、田村さんの著書『最後までひとり暮らし』から抜粋し、再編集してお届けします。
ひとり暮らしの自由
ひとり暮らしは、自由です。これは間違いありません。
誰に気兼ねすることもなく、起きる時間も、寝る時間も、食べるものも、着るものも、すべて自分で決められるの。
今日は外に出たくないな、と思えば一日中家にいてもいいし、急に思い立って散歩に出ても、誰に説明する必要もないわ。
若いころは、そんな自由があることに、あまり気づいていなかったのよ。
むしろ、誰かと一緒にいることのほうが「普通」だと思っていたし、ひとりでいる時間は、どこか中途半端で、もの足りないように感じていた時期もあったわ。
でも、年をとってみると、ひとり暮らしの自由は、想像していたよりも、ずっと深くて、ずっと静かで、ずっとありがたいものだとわかってきたのよ。
誰にも合わせなくていいということは、つまり、自分の体と心の声を、そのまま聞いていい、ということなの。
ただし、その自由には、一つだけ、とても大事な側面があるわ。