心の機微を丁寧に
<海軍中尉ではなく、詐欺師であること。直美は鹿鳴館に出入りするための踏み台であったこと――。正体を明かした寛太と直美が団子屋でお茶をしながら、お互いの素性を話すシーンでは、寛太の悪びれないひょうひょうとした言動に魅せれられた視聴者も多かった>
小日向として直美に会っていた時の演技は、自分としては苦しかった部分もありました。直美は笑顔で接してくれているのに、自分は偽りの笑顔。その食い違いにストレスを感じて、詐欺師を演じる苦しさがありました。だから、着流し姿で寛太になった時には居心地がよかったです。やっと本心で会話できるようになって、「直美さんも親がいないの」とか「頑張ったね」と話すのは、楽しかったですね。
撮影現場はアットホームで、演者のアイデアを受け入れてもらえる環境があります。団子屋の場面では帰り際、寛太は直美に向かって財布を投げました。あれは僕のアイデアなんですが、昔の映画でヤクザ者が懐から財布を放り投げるシーンがあって、いつか絶対に芝居に取り入れたいと思っていました。監督も面白がってくれるので、自分が蓄えてきた芝居の引き出しを臆せずに出していこうと思っています。
寛太は女性をだますロマンス詐欺以外にもいろいろな悪事に手を出していきます。でも、一貫しているのは、弱者からはお金を取らないということ。寛太は、直美からお金を取るつもりはなく、直美を利用して鹿鳴館のお金持ちを狙っていました。
鹿鳴館の張りぼての一面にも気づいていたからこそ、「金を巻き上げてやるぞ」と思っていた。直美に対してはちょっとひどいことをしてしまったけれど、世の中に対する復讐が心の中にはある。
寛太は、複雑な内面や生まれもった事情があって、それを誰かに打ち明けたり、弱音を吐いたりは、多分してこなかった。それが、直美に出会って自分のなかで蓋をしていたものがちょっとずつ開いていく。寛太の心の機微を丁寧に演じていきたいです。