どんなに汚くても死にはしない

阿古 瀧波さんは、ほかの家事の分担はどうしているんですか。

瀧波 そうですね、洗濯・掃除は実家で母に軍隊のように仕込まれたので、苦じゃないんです。母がやたらときれいにする人で、私も気が付いたらあちこち、掃除はしていると思います。

伊藤 へえ、1980年代のわが家は汚かったですよ。夫が家事を手伝うってことが今ほど浸透してない頃で、本当に闘いでしたね。出たばかりのワープロ一台をふたりで使っていたし、夫も家にいることが多かったから、仕事をする時間も何もかもが取り合い。おふたりみたいに家事の分担をしていったんじゃなくて、互いに「家事をしない」という方向で一致をみた。だから掃除をしていると夫が「仕事しろ」と怒るの。どんなに汚くても死にはしない、座れる場所だけあけておけ、って。

瀧波 あー、夫も家事をしなくちゃならない流れになるから。

伊藤 そう。だから家はいつもぐっちゃぐちゃだし、洗濯物も家の中に干しっぱなし。必要な衣類はそこから取って着ていたから、ミカン狩りみたいだった。

瀧波 すごい。(笑)

阿古 私の場合はアトピーがあって、ある程度は家をきれいにしておかないと、湿疹が出てしまうんです。食事も、外食が続くとどうしても体調がよくないので、作らざるをえない。私は洗濯物や布団を干すのがわりと好きなんですよ。干して、日なたの匂いをかぐのがいい。

伊藤 それって、文化的な刷り込みによる部分が、けっこう大きいのではないでしょうか。

阿古 そうだと思います。

伊藤 アメリカに住みだしたら、ますます外に干さなくなりました。布団がジメッとしていても、アメリカ人って気持ち悪いと感じないんですよ。私が住んでいたエリアはカラッと乾いていたのもありますが。

瀧波 お手伝いさんみたいな人はいましたか。

伊藤 いました。専門のクリーニングウィメン、メキシコ人の女の人が家中を掃除する。私が夫の家に住み始める前から来ていて、近所もみんな同じ。家が大きいですから、当初は1回50ドルくらい、今は100ドルになりましたけど。

瀧波 私は家事の外注はしたことがないですね。夫が家に知らない人を入れるのが好きじゃないので。今はルンバが床掃除をしてくれています。20年くらいすると、こういう便利なものがもっとできて、娘なんかは困らないんじゃないかな。

「何か言われたら速攻でやらなければならない」と母から厳しく言われて育った阿古真理さん。「頼み事をしても自分のタイミングで好きに動く夫」にイライラしてしまうとか